松江歴史館からお堀沿いに歩いてすぐのところに、「ホーランエンヤ伝承館」という建物があります。名前のとおり「ホーランエンヤ」について学べる場所です。
そもそもホーランエンヤって何のこと?
「ホーランエンヤ」は初めて聞く方も多いかもしれません。そもそも日本語ですらないような音ですよね。
松江市のホーランエンヤは日本3大船神事と呼ばれるお祭り。松江大橋から盛大なお祭りを見ることができます。「松江市の」ということは、他にもあるのか?実はあるんです。
日本は海に囲まれた国、船神事と呼ばれる行事はたくさんあります。船神事とは、神社が行う船を使った神事。期間ややり方は、全国各地にいろいろ存在するんです。
また「ホーランエンヤ」は「宝来遠弥」「豊来栄弥」とも表記される豊作祈願、神事の際の掛け声とも呼ばれています。
そのため、これも全国各地に存在、大分県豊後高田市にも「ホーランエンヤ」はあるんですよ。
しかし、ここ松江市のホーランエンヤは歴史、規模ともに別格。ということで、日本3大船神事と呼ばれているんですね。ちなみに、後の2つは大阪天満宮、厳島神社です。
松江市のホーランエンヤは10年に1度しか開かれないお祭り。そのため人出は10万人とも言われますが、2009年開催時の人出は36万人越え。松江市の人口よりはるかに多い人数の見物客が訪れます。
どういったお祭りなのか気になりますよね。ホーランエンヤ伝承館では、お祭りに足を運ばなくてもお祭り気分を味わうことができます。
きらびやかなホーランエンヤの世界
ホーランエンヤ伝承館は、おもに展示室とシアタールームに分かれていて、展示室はホーランエンヤの起源と歴史について紹介しています。
松江城山公園内に松江城山稲荷神社がありますが、ホーランエンヤはこの神社のご神体を10キロほど離れた、東出雲町の阿太加夜(あだかや)神社まで、大橋川(宍道湖と中海をつなぐ川)を通って船で運ぶお祭りです。
別名「松江城山稲荷神社式年神幸祭」とも呼ばれます。
阿太加夜神社に神様が滞在するのは1週間程度、そのためお迎えにも行かなくてはいけません。
前者を渡御祭(とぎょさい)、後者を環御祭(かんぎょさい)と呼び、ホーランエンヤの見どころ行事になっているんです。
中日には「中日祭」が阿太加夜神社で行われ、これも見どころ。ちなみに、この神社のある地名は、東出雲町出雲郷(あだかえ)。「読めない地名」として、ちょっと有名。
神事の始まりは1648年、江戸時代初期の頃。松江藩は凶作に見舞われました。
その対策として当時の藩主、松平直政公が「霊力が強い神主がいる」とされる阿太加夜神社に、城近くにある松江城山稲荷神社のご神体を運びお祈りすることにしたのです。
ちなみに、この時点では派手さはなかったよう。その後、1808年の神事の途中、船が大嵐に見舞われて転覆の危機に。神事の大ピンチ!を救ったのが、地元「馬潟(まかた)地区の漁師」さん。
ここから、馬潟・矢田・大井・福富・大海崎(おおみざき)の5地区が参加する12年に1度の華やかな船神事になったのです。
ちなみに12年に1度という間隔があまりに大きすぎ、話し合いの末、現在は10年に1度となっています。
ホーランエンヤで使われる船は櫂伝馬船(かいでんません)と呼ばれ、飾り付けが実に見事なモノ。
船頭で舞う「剣櫂(けんがい)」、船尾で舞う「采振り(ざいふり)」と呼ばれる舞手に太鼓の叩き手、船の漕ぎ手など総勢、50~60人が乗り込みます。
剣櫂は男装、采振りは女装。もちろん、この櫂伝馬船に乗れるのは大変名誉なこと。乗船は男性限定のため何となく歌舞伎っぽい感じもします。
しかし、櫂伝馬船を持つ地区は松江でも人口の少ない地域。伝統継承は大変なようです。
展示室には、5地区のモデルも立体で展示されています。とても華やかですね。掛け声や舞の違いが細かく書かれ、映像でも紹介されています。
船を出す5つの地区は、松江市郊外の中海側にある集落。ホーランエンヤが開催される1年前から船を修復し、神事の立ち振る舞いの練習を始めます。
シアタールームでは、その具体的な準備の様子を観ることができます。
シアターの奥の部屋は、ホーランエンヤの写真や切り絵などを展示。采振りの采もあります。
ちなみに、2019年は10年に1度のホーランエンヤの年!2019年5月18日~26日に開催されます。
合計100隻以上の船を仕立てて行われる壮大な行事ですが、祭りに関係するのは90隻、それ以外は報道・救助船など現代ならではの船が出ていくよう。
松江大橋付近で5地区の櫂伝馬船を見ることができまよ。
櫂伝馬船に乗ろう!
中庭には、なんと実際の半分のスケールの櫂伝馬船があります。実際に乗ることできるので、ぜひ体験してみましょう。
1/2サイズでもとても大きい!船に乗り込もうとすると、このサイズでもちょっとビビります。
乗ってみると海上でもないのに、不安定な感じも。装束を身につけて船首で舞う人って、「すごい!」と思いました。
船を降りて建物側に行くと案内板があります。この位置から見た景色が宍道湖に浮かぶ櫂伝馬船と同じ風景になるそう。
頑張って想像してみました!・・が、やっぱり海じゃないので無理です!(笑)
水の都松江はしっとりとした街で、落ち着いた雰囲気のものやイベントが多いですが、ホーランエンヤは水の荒々しさを見ることができる行事です。
ですが、10年に1度開催される行事見物のハードルは高いので、ホーランエンヤ伝承館で体験するのがおすすめ。もちろん「現地見物」の予習にももってこいです。
ちなみに、ホーランエンヤ開催中の1週間、松江城山稲荷神社にはご神体がいないですよね。この時期に城山稲荷神社にお参りするとどうなるのか?
神様ですから、きっと何とかお願いごとは聞いてくださることでしょう。
- 料金:大人200円(松江歴史館有料展示観覧者は無料)
- 営業時間:8:30~18:30(10~3月は17:00まで)
- 定休日:毎月第3木曜日(祝日の場合は翌日)
- アクセス:JR松江駅から「ぐるっと松江レイクラインバス」大手前堀川遊覧船乗り場、歴史館前バス停下車、徒歩3分・塩見縄手バス停下車、徒歩1分
- Web:https://matsu-reki.jp/ho-ranenya/