松江市

【松江】年に一度の幻想的な世界、月照寺「万灯会」

8月15日はお盆の最終日。送り火を焚いてご先祖様の魂をお見送りする日です。

松江市にある月照寺では、年に一度のこの日に万灯会(まんどうえ)というイベントが行われます。

夏の1日だけ見られる景色

月照寺は「あじさい寺」としても有名なお寺。

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松江藩主「松平家」歴代のお殿様のお墓もずらりと並び、松江城と合わせて見学すると、より大名という地位の重みや歴史を感じられる場所です。

藩主のお墓ですから、松江の地を守ってくれている雰囲気もあります。

そんな月照寺には、年に1度だけ夜の拝観が可能な日があるのです。

それが8月15日の万灯会。万灯会とは夜に火を灯してお祈りをする仏教の行事。月照寺ではお盆の終わりの時期に行われます。ちょうど送り火のようですね。

ろうそくの明かりを見るだけでなく、拝観者もろうそくをもらい、置いていくのが月照寺ならではのやり方。見るだけではなく参加する行事なんですね。

万灯会の開始時刻は17時半。とはいえ開始時刻はまだまだ外は明るいので、夕方の月照寺を楽しんだり、受付をしてくれる書院に上がって庭を楽しむこともできます。

万灯会の日は夜のお茶席もオープン。お茶席ももちろん年に1度だけのイベントです。

灯りが美しい夜の書院

お抹茶は書院に上がり赤い毛氈(もうせん)と呼ばれるじゅうたんのある場所でいただきます。

書院のお部屋や庭を眺めていると、とっても不思議な空気が漂ってきます。日本家屋というのは、ただ時間が変わるだけでとっても雰囲気が変わるものですね。

お抹茶には松江を代表する和菓子屋、風流堂さんの代表的銘菓「路芝(みちしば)」が添えられています。

夜のお抹茶とお茶菓子、じゅうたんの赤もまぶしく不思議な世界に捕らわれていくかのよう。

ちなみに、月照寺はあの小泉八雲が怪談の舞台に取り上げた場所でもあります。

1つ1つの灯りがともすゆったりとした時間

19時を過ぎると急速に外は暗くなっていきます。

もともと足元の石など自然を活かしたつくりになっているお寺だけに、暗闇はとっても危険。できれば懐中電灯、もしくはスマホのバックライトなどを使うと安全です。

真っ暗闇に並ぶろうそくはとっても幽玄、送り火の時期だけに仏様がかえっていかれるかのような気分にもなります。

境内のところどころでは同じようにろうそくを持ち、ほかのろうそくから火をいただいて置いて行かれる人がいます。

人の数だけろうそくと想いがあるって素敵ですね。日頃の感謝を込めてそっと置いていきます。

灯りを見ながら大名のお墓をめぐっていくと、真っ暗闇に浮かぶ廟(びょう)の雰囲気に圧倒されます。

池のなかのウシガエルの声、背後にある竹林が風にあおられゴーっという音を立てる様子、すべてが小泉八雲の本に出てきそうな世界。

小泉八雲が実際に題材にしたという「大亀」の前にはたくさんのろうそくが置かれ、拝む人も。

この大亀は夜になると歩いてしまうため上に碑が乗っている、というのが怪談のストーリーですが、頭をなでると長生きをするとも言われています。

たくさんの人に拝まれ、愛される亀といった佇まい。愛されるからこそお話にも出てくるのでしょうね。

夏の夜、にぎやかなお祭りも楽しいですが、お盆の時期の松江でしか味わえない静かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。